市民フォーラムを代表して区長に質問します。私は、新潟県中越地震を受けての区の防災対策の見直し、茗荷谷駅前地区再開発計画の見直し、自治基本条例と安心・安全まちづくり条例について、質問します。誠実な答弁を求めるものです。
最初に、新潟県中越地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
国や自治体は、被災者が求めているものを敏感に把握し、将来に向けて安心し、希望を抱ける復興策を速やかに実行に移されるよう強く求めます。特に国は、「被災者生活再建支援法」の早期改正を行い早急に被災者の住宅再建等に取り組むよう求めます。
今回の地震は、倒壊家屋数に対する避難者数の割合が高く、避難所生活を送る人の数は、地震直後は十万人を越え、現在も7千人近くと報道されています。また、大揺れの家屋から逃れたのに、その後、体調不良で亡くなった高齢者が多いことは大変残念なことでしたし、避難所に入れなかった人、プライバシーを保ちたい人、自宅近くで生活したい方たちが自家用車での生活を続けたため、過去の災害では経験したことがないエコノミークラス症候群で亡くなっています。
この震災は新たな課題や教訓を私たちに与えました。地震発生直後の住民への広報のあり方、必要な物資が日々変化すること、避難所運営には予想以上に多くの人手が必要なこと、避難所生活が長引くほど医薬品の対応も含め、心身の健康や衛生面での対策が重要なこと、復興にむけた国や県、自治体の対応を住民にわかりやすく示すことなどです。
文京区の地域防災計画や策定中の震災復興マニュアルなどの総点検が必要と思います。区長の決意と見直しについて伺います。
災害時における要介護者、障害者、外国人の支援、そしてペットの受け入れについて伺います。
第3回定例会では、市民フォーラムの「災害時の高齢者援護に関する質問」に対し、高齢者や障害者等の災害時要援護者の把握・情報の伝達・安否の確認・救援に取り組むご答弁をいただきましたが、避難生活における要介護者や障害者の支援体制はいかがでしょうか。
神戸市では震災の反省を踏まえ、要援護者支援マニュアルをまとめ、災害本部に「要援護者支援本部」を設け、要援護者の安否確認、実態調査、ヘルパーや保健師らによる巡回相談、要援護者を避難所から福祉避難所などへ移送という段取りを決めています。また、避難所での高齢者の健康について市民参加の救護班が援護を行う体制の整備や保健衛生部や福祉部の避難所での活動マニュアルを定めている自治体もあります。
今回の震災では避難所にいる高齢者の安否確認や相談にケア・マネジャーが積極的に関わりました。長岡市の老人ケア総合施設は市内の在宅介護をうけている高齢者の避難場所にもなりました。高齢化率が19.2%と高い文京区においては、避難所などで介護を必要とする人に対し、特段の配慮が必要になります。区内の在宅介護支援センター、介護保険事業所等、連携を含めた災害時の要介護者への支援策をお示し下さい。
新潟県中越地震では、聴覚障害者への情報伝達がFAXで行なわれていましたが、地震で気が動転していた障害者の中にはFAXを気付かずにいたこと、バリアフリーになっていない避難所では車いすの障害者は不自由な生活を強いられていることが報道されています。
また、阪神淡路大震災での避難所生活のトイレの困窮は、高齢者や障害者が水分摂取を控えることとなり、体調を崩したり病気の悪化を招きました。その経験から、高齢者や障害者が使いやすい簡易トイレを備蓄している自治体があります。介護サービスを利用している高齢者も含め障害をもった人達のための備蓄品の見直し、プライバシーが守られ気兼ねなく安心して生活できる避難所の運営など、災害時要援護者といわれる方々への避難後の支援策を伺います。
災害弱者の中には外国人も含めるべきだと考えます。
文京区国際協会が行った「文京区外国籍住民の住みやすさ調査」によると、「災害などの緊急時に、文京区にどのようなことをしてほしいか」という問いに、避難場所の案内を外国人にもわかりやすく、日本語以外の言語で放送や誘導、外国語による緊急時対応のパンフレットの配布、外国語による情報提供が熱望されています。また、外国人を対象にした特別な防災説明会を開いてほしいという意見も寄せられています。
区役所には、英語、韓国語、中国語で書かれている文京区防災地図や消防科学総合センターの製作した啓発パンフレットが用意されていますが、パンフレット類から知識は得られても、災害時の行動はさまざまな訓練に参加することにより体験的に身につき、不安が解消されます。防災訓練や避難所訓練へ参加を促すことや防災説明会の開催などを実施すべきだと思いますが如何でしょうか。
また、新潟県中越地震においては、避難所の生活で戸惑う外国人のため、NPOが様々な情報を盛り込んだ広報誌を発行し、精神的に安心感を与えたといわれています。災害発生後の外国人支援の方策をどのように行うのか伺います。
外国人支援の災害ボランティアの育成とネットワークの立ち上げも視野にいれることが必要と考えますが、如何でしょうか。言葉の壁が災害時に弱者を生み出すことのないような対応を求めます。
次に、災害時におけるペットの受け入れについて伺います。
ペットの同行避難は、災害時に直面する問題であり、事前の対策が必要です。高齢者にとって、ペットは愛玩動物というだけでなく、家族の一員でもあり、癒しを与え、災害時には精神的ケアを与えるといわれています。
飼い主の責任で災害時の対策を行うことは原則ですが、負傷したペットについては、獣医師会と協定を締結している区が多くあります。ケージに入れること等をマニュアルで定め、避難所への同行を基本としている区もあります。避難所では動物の毛や唾液によりアレルギー症状を呈する人もあることから、飼育場所の設定をしている区もあります。板橋区や練馬区はペット同行訓練を実施し、一定のルール作りを行っています。
日本同伴犬協会の2002年の調査によりますと、文京区は獣医師会との協定はなく、避難所への飼育動物の同行や同行避難訓練については検討中に留まっていますが、災害時のペットの受け入れ対策についてあらためてお伺いいたします。
次に、災害による帰宅困難者対策について伺います。
大規模な災害が発生した時、援助を必要とするのは区内在住者のみとは限りません。
通学・通勤・買物やレジャー等で区内を訪れていている人など帰宅困難になる人たちが文京区では11万3000人発生することが「東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書」で想定されています。震災時には、自宅までの帰宅距離が10km以内の人は全員徒歩帰宅が可能ですが、帰宅距離が20km以上の人は、翌朝まで徒歩帰宅は全員が困難です。
大都市特有の問題として、帰宅困難者の支援対策は重要な課題です。文京区地域防災計画にある帰宅困難者対策は、都の方針や基本原則に留まっており、区独自の対策やシミュレーションはなされていません。文京区で発生が想定される帰宅困難者の対策は、通勤・通学など組織に属している人と買い物・レジャーといった組織に属さない人においては自ずと違ってきます。
「東京都の震災時における昼間都民対策」や「文京区地域防災計画」では「組織は組織で対応する」ことを帰宅困難者対策の原則として掲げています。しかし、新宿区が行った事業所防災アンケートによると、「地震に備え備蓄をしている」と答えた事業所は25.9%に留まり、帰宅困難者対策意識の低さや備蓄の不足が指摘されています。事業者等に対し、帰宅困難者を視野に入れた啓発や防災マニュアルへの盛り込みなどの区の指導はどのように行っているのかを伺います。
買物・レジャーといった組織に属さない帰宅困難者数は、2万4000人と想定されています。これらの人たちは属する組織がない個人であり、情報の提供や避難誘導が的確になされないと、行動の判断を誤ったり、パニックに陥る危険性があります。帰宅を試みるために駅に向かい、駅周辺の混雑・混乱を招きます。そのような帰宅困難者が集中するエリアを予め想定し対策を考えることや、交通機関と提携して情報の提供を行う等、組織に属さない人への支援はどのように考えているのか伺います。
文京区が行っている食品の備蓄は想定避難所生活者数35,000人の3食分を最低基準としていますが、昼間人口、中でも組織に属さない人を含んだ食品等の備蓄を考えるべきと思います。地域防災計画は、平成13年度修正により、食品備蓄は3食1日分でよいとされていますが、再検討を要します。区長の見解を伺います。
帰宅困難者の居住地別内訳は埼玉県が98万人、神奈川県が92万人、千葉県20万人、多摩地区70万人、区部29万人と推計されおり、東京都は帰宅支援対象道路16路線を定め、半径2km以内にある都立学校を帰宅支援ステーションと位置づけています。
文京区では、都立文京盲学校、竹早高校、小石川高校、向丘高校、工芸高校が帰宅ステーションに指定され、水、トイレ、情報の提供を行うことになっています。しかしこれらの帰宅支援ステーションは滞在場所としての機能も求められることが、既に帰宅困難者訓練を行った自治体から指摘されています。「文京区平成15年度 災害対策本部運用訓練の考察」でも、本部班の今後の対応が望まれるものとして、「庁舎へ帰宅困難者等が押し寄せてくることへの対応」があげられています。平成14年の考察でも、「帰宅困難者への避難所対応は小中学校とは別に確保する必要がある」ことをあげています。これらの考察に対し、どのように対策をたてるのかを伺います。
都立学校だけでなく、施設の安全が確認されている大学等と協定を結ぶ自治体もあります。区内の帰宅困難者支援路線には大学もあります。滞在場所としてのみでなく、学生ボランティアとしての登録も含め大学との連携についての検討を求めますが、如何でしょうか。
大都市の災害に備えるためには、帰宅困難者を想定した広域的な連携を伴う訓練等を実施すべきですし、区災害対策本部に帰宅困難者対策の組織を設置することも検討すべきです。如何でしょうか。
区は、避難路沿道の建築物について耐震改修の助成を25件行うことを基本構想実施計画に新たに盛り込むとのことですが、避難路沿道のみでなく、広く区民を対象に耐震補強工事の助成を行うべきです。民間シンクタンクのデータによれば、東京直下地震の被害は82兆円ですが、東京の木造住宅の耐震補強経費は1兆円程度と試算されています。耐震補強は極めて効率的な投資です。
また、東京消防庁によると地震で負傷する大きな原因は、屋内での家具等の転倒や落下物だとされていますが、その対応をしている都民は3割とのことです。東京消防庁によれば家具を傷つけない器具でも大幅に家具の転倒や物の落下を防止する効果が期待できるということです。区民の被害を発生させない具体的な対応を実施すべきです。
日本は、自然災害の大国とも言われています。その中でも、都市を襲う地震災害こそ、都市のもろさを予想もしない形で私達に突きつける最悪の都市災害となります。地震災害が都市災害となり行政の判断ミスや対応の遅れによる人災となることがないように、更なる防災対策の強化を求めます。
茗荷谷駅前地区再開発計画について伺います。
9月28日に都市計画審議会で決定された「茗荷谷駅前地区第一種市街地再開発事業」については、都市計画法第17条2項で定める意見書で千通を超える反対意見書、その他に地元から約3千人の反対署名が提出される等、区政の大きな争点になっています。近隣住民は低層住宅地に隣接して21億円の税金を投入する100mビルができるのは、環境破壊であることを訴えています。関係権利者の一部の方は、反対や未同意であり都市計画決定は不当と訴えています。
都市計画審議会では、付帯意見を付す事を条件に採決がされ、「住民説明」と「住民の意見を十分尊重」すること、「高さ・・景観も含めた環境」を特段に考えるべきと会長が発言されています。
区長、茗荷谷駅前地区再開発事業は見直しをすべきです。区長は、都市計画審議会会長からの付帯意見をどのように受け止め、住民意見の尊重と、今後の住民説明、100mの高さを下げること、景観も含めた環境についてどのような指導を行ない、100mビルの見直しを進めるのか伺います。
意見書のずさんな扱いは、住民主権に反するものです。茗荷谷駅前地区再開発計画について賛成意見書で、住宅がない地番から20名もの多数の個人名の署名形式の意見書、関東近県からの家族4人等の署名形式、同じ筆跡で記入された意見書は、法的に疑義が生じます。特に、協力事業者とされている旭化成ホームズからの意見書は、営利目的の事業者の法の悪用を許すものです。
都市計画法第17条2項では「縦覧に供された都市計画の案について」「意見書を提出することができる。」と要件を明確にしていることから、署名日時が法の要件と著しく違う意見書は、全て無効であることは明白です。茗荷谷再開発準備組合が都市計画案が縦覧に供される前から署名を集めこれを区長に提出したことも公式に準備組合の7月1日付け文書で公表されています。
担当事務局は、都市計画審議会でも日付を確認しないで受理していることを明確に答弁しています。区長は、担当事務局に厳重な注意を行うべきですが、如何でしょうか。
重要なのは、自治事務である都市計画事業について、地方自治法第2条の12で定められているように「地方自治の本旨に基づいて」「これを解釈し、及び運用」するという基本の確立です。文京区の茗荷谷駅前地区再開発計画についての住民の意見反映、参加手続きは極めて形式的、官僚的です。政策形成段階からの区民参画を唱える区長の姿勢に反します。
私は、先日香川県の豊島の50万トン以上にもなる産業廃棄物の不法投棄現場を視察してきました。豊島事件と呼ばれるこの産業廃棄物不法投棄事件は、全島を挙げてこの産業廃棄物事業者への許可を与えることに反対してきた島民の意思を無視し、香川県の許可、指導監督の下に発生したわが国最大級の有害産業廃棄物不法投棄事件で、兵庫県警の摘発により操業停止が行なわれるまで13年間にわたって有害産業廃棄物が不法投棄、野焼きされ埋め立てられ、住民の生命や健康さえ脅かすほどの環境汚染を引き起こし、瀬戸内海にダイオキシン等の有害物質を垂れ流し続けてきたのです。
その失政の代償として香川県はダイオキシンなどを大量に含む汚染土壌と廃棄物の処理と撤去のために500億円もの税金を投入することとなりました。豊島住民は、香川県知事が「心からの謝罪の意を表する」ことを表明することで和解しましたが、日本の地方自治体の侵した最大級の誤りといえるこの事件は、直接の当事者であった住民を無視することが大きな原因でした。
地方自治体が国が定めた法律を盾に取り住民を無視すれば、豊島事件はどこにも発生します。法律を「地方自治の本旨に基づいて」「これを解釈し、及び運用」することを怠る行為は許せません。住民不在の区政ではなく、住民主権の視点で自治事務としての都市計画事業に区民参画のあり方、手続きを定めるべきです。如何でしょうか。
自治基本条例について伺います。
「文の京」自治基本条例が区長より提案されました。自治基本条例は、2000年に制定された「ニセコ町まちづくり基本条例」以降、全国の自治体で制定・検討が行なわれています。私もニセコ町には会派で視察をさせていただき逢坂町長に様々なご意見を伺うことができました。
「区民憲章」の検討に当たっては、昨年6月に設置された「区民憲章を考える区民会議」で、最終報告に至るまで13回の全体会と2回の小委員会での協議が行なわれると共に、地域説明会や各団体への説明が行なわれ、区民のみなさんから多くの発言があったことは、承知しています。
しかし、そういった区民の皆さんの意見と要望がありながらも、文京区の自治基本条例の特徴は、区長がこの間述べているように「新公共経営」を基礎とし、「ガバナンス」という考えによる「新しい協働」であることには変わりはありません。
8月9日の「区民憲章を考える区民会議」の最後の議事録を読みましたが、最終段階であるにも関わらず、様々な意見が出されていますし、公募委員をはじめとする皆さんのご努力が分かります。
しかし、その日の「区民憲章を考える区民会議」に資料として提出されている「区民憲章についての区民会議の提案に関する意見・要望」を読むと、更に多くの区民が「ガバナンス」も「協働・協治」にも批判・疑問を持っていることが分かります。区長は、「区民憲章についての区民会議の提案に関する意見・要望」を読んだのでしょうか。「自治基本条例」の基本に対する区民からの批判や疑問について、区長はどのように考えているのか最初に伺うものです。
条例案には、その目的として抽象的に「豊かな地域社会を実現することを目的とする。」としていますが、そこには具体的な文京区の自治の目指す姿を感じることができません。
「区民憲章についての区民会議の提案に関する意見・要望」でもそのことは指摘をされています。その原因は、この間私達が指摘しているように、区民意見が尊重されているのではなく、昨年1月の「文京区区民憲章(自治基本条例)研究会報告書」に重きを置くことにあるのではないでしょうか。例えばその「研究会報告書」では、男女平等や子どもの権利などは、行政だけで保障することが難しいとされ、条文に盛り込むことは極めて消極的で、「実効性が確保」できないからという論理展開で事実上、排除されているのではないでしょうか。
区長の提案している条例案でも同様の考え方にたち、前文や目的、自治の理念と基本原則にこれらの権利や政策課題が排除されていると考えられます。しかし、そのことによって基本的人権の保障や平和や男女平等参画や環境権もない、目指すべき文京区の自治の姿が感じられない非常に分かりづらい「協働・協治」だけの条例になってしまったと考えますが、如何でしょうか。
日本地方自治学会理事長でもある明治大学大学院長の中邨章氏は、その著書で「ガバナンス」という表現は、「流行のファッションのような様相を呈し」、「意味が定かにならないまま」使用されていると指摘しています。同時に、「ガバナンス」とほぼ同じ意味合いをもつ「ニュー・パブリック・マネジメント」については、「その手法を地方行政に持ち込むことには、相当、慎重な配慮が必要とされる。」ことと、「ニュー・パブリック・マネジメントという成熟した理論があって、それが各国の行政改革を先導したのではない。」ことを説明しています。
区長は、こういった識者の研究・調査・指摘について、あらためて十分に検討し区民にそれを説明する責任があると思いますが、如何でしょうか。
条例案では、「協働・協治」が「文京区の自治の理念」だとされていますが、中邨章氏の著書には、「ガバナンス」も「協働・協治」も「市民社会」を実現する手段だと説明されています。国際的な学会では様々な議論があることも紹介しています。
「協働・協治」を「文京区の自治の理念」とし、「各主体」と位置づけられた区民、地域活動団体、非営利活動団体、事業者及び区が、「それぞれの果たすべき役割と責任を分担し、助け合いながら自主的、自律的に活動を行う」ことについては、区民の理解を得られるものではありません。
「ガバナンスの基本」つまり「新しい協働」は、「容易なことではありません」「それを果たすことに難しさを感じる人は多いでしょう。」そのため、どの自治体の「基本条例」といわれているものも、「行政活動への市民の参加」という、「これまでの協働を基本」としていると「研究会報告書」は説明し、区長も同様な理解と思いますが、理論にたよって現実を改革することの危険性は、中邨章氏が特に指摘しているところです。区長は「協働・協治」を、区民の責務とすることに、全ての区民の同意が現時点で得られていると考えているのでしょうか。
引用した条例案の第3条(協働・協治)だけでなく、第4条(参画と協力)では「各主体は、地域の課題を解決するための活動に積極的に参画する」、第7条(自己決定・自己責任)では「各主体は、自ら決定し、自らの責任において活動する」、第九条(区民の責務)では「区民は、自主的・自律的な活動を行うとともに、自らの発言及び行動に責任を持つ」とされていますが、それとは逆に、ニセコ町まちづくり基本条例では、参加しないことを理由とする「差別的な扱いを受けない」ことを定めています。文京区の条例案の表現は、区民への「協働・協治」を義務とし、公的サービスの産出・供給を強制し、「協働・協治」に区民を総動員するような内容だと区民に印象づけるものと思いますが、如何でしょうか。
区長は、従来型の「区政への区民参画」は古臭いもので、「行政活動への市民の参加」ではない、「全国的に例のない」「ガバナンス」の考え方に立つ、「協働・協治」こそが「新しい自治の理念」であると考えているものと思います。
それ故に、区政への参画については、多くの自治体で区民の権利と表現されていますが、文京区の条例案では、政策立案・実施・評価の各段階への区民参画が、区の「協働・協治」の視点で行うものと表現されています。つまり区民の権利ではなく、区が実施するものであると書かれています。何故、区民の権利として条文化できないのか、伺います。
また、今回の条例案には「区長は、文京区の代表者として、公正かつ誠実に区政の執行にあたる」とされ「代表者」ということが強調される一方で、杉並区等で定められている「住民の信託」に区長が応えることや、多くの自治体で定めのある「住民主権」もありませんし、「日本国憲法により保障された地方自治権の一層の拡充」等の宣誓を首長に求めるニセコ町のような条文もありません。何故でしょうか。
条例案にはあらたに保証役・調整役としての区の役割が入りました。
保証役としての役割を定めた第17条では、「区は、自ら公共的サービスを提供する役割を担うだけでなく、適切な公共的サービス水準の設定及び区民等の活動の支援を通じて、区民等により公共的サービスの提供が適正に行われることを保証するよう努める」とされています。
しかし、中邨章氏は、最近のイギリスの民営化した鉄道の事故やニュージーランドでの失業者の増大に触れ、NPMについて再検討する動きがでていることを紹介しながら、「公共政策では、時代がどれほど変化しても、民間の経済論理とは異なる原理で動く部分を残しておかなければならない。NPMはその可能性を極端に小さくする。」「NPMは行政の透明性や説明責任、あるいは、参加や平等性に関しても関心があまり向かないようである。」としています。
区が直接サービスを提供するのではなく「保証役としての役割」を強調することが、区民サービスの低下につながるのではないかという疑問は、「区民憲章についての区民会議の提案に関する意見・要望」にも多くありますが、区長の考えを伺います。
第18条では、調整役としての役割を定め「区は、必要に応じて、区民等の間の調整を行う」としています。これは「研究会報告書」での「協働社会における苦情対応の仕組み」を踏襲するもので、「行政活動に対する苦情の対応については、一定の仕組みができている」ので、協働型社会における、「各主体間の苦情や紛争を解決する仕組みづくりを検討」する必要があるという考えに沿った内容です。
文京区基本構想の最終報告では、区の憲法ともいうべき区民憲章、つまり自治基本条例で「区民参画の具体的な仕組み及び手続、苦情解決の仕組み」を定める必要があるとしましたが、これに反する内容となっています。区長は基本構想との関係を説明すべきですが、如何でしょうか。
最後に、「文京区の自治の理念や基本的なしくみを明らかにし、文京区の自治に関する基本条例である」とされる「文の京」自治基本条例の第43条は「区は、条例の制定、政策の実施等にあたり、この条例の趣旨を尊重しなければならない」としています。
しかし、それだけ重みのある「文の京」自治基本条例の内容は残念なことに区民の多くに知られていません。「区民憲章を考える区民会議」の最終報告は区報に掲載されましたが、区長の提案については、区報でも知らされてはいないからです。この条例は特別なものです。区民への十分な周知期間をおいて、条例案について区民の意見を聞くべきです。それが、区長の「区民と共に区民とともに生きる区政運営」「住民自治の充実」ではないでしょうか。如何でしょうか。
区長、この条例は広範な区民参画による検討と区民の圧倒的多数が賛成することを前提とすべきものです。議会の過半数による賛成だけでは第43条の重みがありません。この条例案には、区民の意思表明や住民投票が定められています。それを実行されるべきではないでしょうか。如何ですか。
次に文京区安全・安心まちづくり条例について伺います。
区長は、昨年の第4回定例会の答弁で安全・安心まちづくり条例の検討を行っていることを明らかにしました。総務区民委員会では、この間何度か質疑が行なわれてきましたが、この条例については、警察からの要請はあったが、区が独自の立場で検討を行っているとのことでした。
しかし、2000年を前後して日本全国で進められてきた警察庁が主導してきた安心・安全まちづくり条例は、警察白書でも組織の運動として進められてきた経過が分かります。そのマニュアルも作られ、1400自治体で条例制定をしているといわれており、その一部は全国防犯協会連合会のホームページでも確認できます。
しかし、安全・安心まちづくり条例を何故、文京区で制定しなければならないのかの議論は十分ではありません。防犯は原則として警察が管轄する領域であり、警察と市民生活との関係や警察以外の一般行政の仕事して達成されるべき教育、福祉、区民生活等の領域との整理が必要で、それらの課題を安易に警察活動の領域とすべきではありませんし、区民の責務として無制限に課すこともできないのは言うまでもありません。
今年の6月末までに全国で発生した重要犯罪は、9年ぶりに減少したと報道されていますし、ピッキングやサムターン回しによる窃盗は大幅減で、昨年9月施行のカギ破り防止法の効果が出たと報じられています。
犯罪の減少は喜ぶべきことですし、そのために警察に期待している国民は大勢います。タバコのポイ捨てや環境美化のために条例をという意見もありますが、これはタバコのマナーやポイ捨をさせない運動等により本来対応されるべきです。
区長、法令や条例の立案に当たっての原則は何でしょうか。それは「第一に、規定しようとしている実体関係について検討」することです。立法事実は何か、立法の根拠は何か、総務区民委員会では私は何度も指摘をしてきました。6月18日の総務区民委員会では「正確なデータが欲しいという協議会の委員さんからご要望」があったが、「データに基づいてこの部分をこういう風に条例化するとか、そういった具体的な議論ということにはなっておりません」と担当課長が答弁しています。
条例案では、委員会で私が何度も問題としてきた前文の「身近な犯罪が増加しており、わがまち文京区においても、例外ではなく増加傾向にある。」を削除したものとなっていますが、立法事実についての根拠と、変更の理由について伺います。
法令や条例の立案に当たっての原則の第二は、「憲法を始めとする基本的な法令との関係」「第三に、行政実務の慣行、判例、学説」とされていますが、その検討が安心・安全まちづくり条例の検討で行われたのでしょうか。
日本国憲法で規定されている基本的人権については、区長はどのように考えているのでしょうか。
文京区安全・安心まちづくり協議会の条文のイメージでは、基本理念を「何人の自由及び権利に配慮」とされていましたが、区長は条例案で「安全・安心まちづくりに当たって、自由及び権利を尊重しなければならない」と修正しました。
基本的人権をどのように扱うかは、委員会でも私が何度も議論をしたこの条例のポイントです。新宿区の「安全・安心の推進に関する条例」では「何人の自由及び権利をも不当に制限するものではない。」と強く強調していますし、警察法第2条でも「日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」と定めています。日本国憲法で定められた基本的人権について、どのような検討があったのか、具体的な議論を伺うものです。
文京区内に事務所を置く弁護士の方々から「文京区安全・安心まちづくり条例に関する要請」が出されていますが、その内容は、条例が制定されることにより「区民らに対する監視社会を招くおそれが強く、基本的人権が侵害されるおそれが強く」、区長に議案を提出しないことを求めています。
区民の責務も条例化にあたって大きく修正・削除されました。それは、文京区安全・安心まちづくり協議会で条文のイメージとされていた「必要な措置を講じるよう努める」、「区、関係行政機関と協力」することも責務とした部分です。これについても「特に警察への協力義務の内容が不明確である以上、区民の住民運動や労働運動、事業主の看板やビラ配布等の営業活動などが取り締まり対象となる危険性がある」とし、「区の責務が抽象的であり、これを検証する規定はなく、区民や地域活動団体、事業者等の意見を聴取、検討する規定がない」こと等、問題が多々あると指摘されましたが、これらの指摘についてどのように考えるのか伺います。
大阪府警東淀川署で、2146人分の個人情報を紛失していたことが最近報道されています。警察における個人情報の漏洩や不正な扱いは連続して発生しています。個人情報の保護・自己情報開示については、警察において区と同様の厳格な措置がされることが、区民からは求められます。その担保はあるのでしょうか。区民や児童・生徒の情報、プライバシーが不必要に警察に蓄積されることはないでしょうか。伺います。
私達は、区民に新たな責務を課す条例については慎重に対応すべきだと考えます。区は、「路上犯罪防止」や「歩行喫煙禁止」、「通学路安全対策」などの活動に取り組むとしていますが、これらのことは条例がなくても必要に応じて要綱や事業計画を定めることで十分対応できます。警察と必要な範囲で協力・連携・支援を求めると共に、区民にも事業への協力・参加を個々に求めることで実施できると考えますが、如何でしょうか。
最後に、区民参画の観点から総括的な意見を申し上げます。
区長が提案している条例案では、文京区安全・安心まちづくり協議会の条文のイメージとされていたものが、私が質問した「基本的人権」や「区民の責務」という部分で、重大な修正があえて行なわれていますが、この条例化にあたっての区民参画のあり方が反映した問題だといえます。
それは、区長が第4回定例会に条例提案を急いだことに全ての原因があるといえますが、その他にも、庁内に設置した検討委員会が実質的な主導権を握っていたこと、文京区安全・安心まちづくり協議会の学識も含めた人選のあり方、協議会が作成した「中間まとめ」の「区民の責務」が区報に掲載されずに区民意見の提出が行なわれたこと、文京区安全・安心まちづくり協議会の実質的な議論は9月10日の第4回で終わり、十分な議論が尽くせなかったこと等です。
今回のような区民参画は、本来の意味での区民参画ではなく、区民利用ともいうべき手法であったことを反省すべきです。私の質問は以上です。ご清聴まことにありがとうございました。
区長答弁
鹿倉泰祐の自席からの発言(区長答弁後)
区長、答弁ありがとうございます。防災対策や茗荷谷駅前地区再開発、自治基本条例、安全・安心まちづくり条例については、市民フォーラムの各議員が所属委員会で更に質疑を深めさせていただきます。
ただ一点だけ、区長の答弁に申し上げたいことがあります。区長は、自治基本条例についての答弁でフランスの思想家であり詩人であるヴァレリーの格言を引用しましたが、間違った意味で引用されています。
ヴァレリーは「われわれは後ろ向きに、後ずさりしながら未来に入ってゆく」という引用文の前段でこう話しています。「われわれは、過去に関する知識の中から、何らかの未来への洞察を引き出すことができると考えている」と。
東京大学大学院の教授 近藤和彦さんはヴァレリーの引用された言葉の意味することは、「先のよく見えないときにこそ、人は来し方をふりかえり、省察します。歴史をきちんと理解することなしに、前に進むことはできません。」と説明しています。「後ろ向きに」「後ずさりしながら」というこの言葉に重みがあるのです。
自分の前だけを見て、進め進めと言うのではなく、後ろを振り返り過去に犯したような同じような過ちを再び犯さないことが必要だとヴァレリーは教えてくれているのです。
この正しい理解が自治基本条例の審議にも役立つと考えます。以上で終わります。
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