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鹿倉泰祐の代表質問(文京区議会 市民フォーラム) 2002年6月11日
@有事法制について
A介護事故とリスクマネジメントについて
B住民基本台帳ネットワーク(文京区ICカード実証実験の延期について)
C区立学校選択制度について
区長・教育長 答弁はこちら
第2回定例区議会 鹿倉泰祐
第2回定例区議会にあたり、市民フォーラムを代表して区長、教育長に質問します。私の質問は @有事法制について A介護事故とリスクマネジメントについて B住民基本台帳ネットワークと文京区ICカード実証実験の延期について C区立学校選択制度について の4つです。
最初に有事法制について区長の見解を伺います。
「有事」とは「戦争や事変が起こること」と辞典に書かれています。有事法制とは戦争に備える法律、戦争を進めるための法律です。政府が今国会に提案した「武力攻撃事態法案」「自衛隊法改正案」「安全保障会議設置法改正案」は、有事関連三法案と呼ばれていますが、まさに日本国憲法が規定する非武装・平和主義を完全に否定する「戦争準備法」です。
軍国主義時代の日本には、天皇にあらゆる権限を集中し、国民を統制・弾圧できる法体系と仕組みがありました。戦後日本は、侵略戦争と植民地支配に対する反省から、いかなる理由であれ再び戦争はしないとする平和憲法を制定しました。日本は、軍国主義時代のような国家緊急権を規定する必要はないと考えられていたので、体系的な有事法制をつくる必要がありませんでした。ですから、有事法制による基本的人権や財産権の制限を想定していません。
小泉内閣が提案した有事法制は歴代内閣が一度も行わなかったことです。
有事法制は、日本国憲法にあらゆる形で抵触します。業務従事命令は、徴兵制に等しいものであり強制労働を禁じた憲法十八条に抵触しますし、良心的戦争協力拒否を理由として、保管業務や立入検査を拒否した場合に罰せられら場合、憲法十九条の思想・良心の自由に反するものと考えます。日本国憲法と有事法制の関係についてどのように区長は考えているのか、まず最初に伺います。
武力攻撃事態法案には「地方自治体の責務」が規定されています。地方自治体が実施する責務を有する「武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置」とは、区市町村にどのようなことが想定されると考えているのか、伺います。また、これらのことが明確でない場合は、区長は国に質問書を送付し説明を求める必要があると考えますが、如何でしょうか。
政府は4月22日に全国市長会に対し説明会を開き、武力を行使する事態となった場合、国と自治体との間で役割分担をする協力を求めたと報道されています。出席した各市長からは「有事の際、自治体が分担すべきことを具体的に教えてほしい」との要望が行われたようですが、「今後個別法で定める」と説明し、「有事の際に住民避難要請をした時、市長が拒否した場合、首相から強制を伴う指示もある」と答えたとのことです。
住民の生命、身体などを守るのは地方自治体の基本的な役割ですが、自治体の長が戦争協力を拒否した場合、首相の指示の強制や、代執行権の行使は、国の権限の一方的な肥大化であり、憲法で規定されている「地方自治の本旨」に抵触するものと考えますが、いかがでしょうか。
全国の自治体で有事関連法案に反対する自治体の長の発言が続いています。三重県議会でも有事法制関連法案撤回を求める決議が採択されました。中国地方知事会では、有事法制についての疑問、問題点、地方公共団体の意向を十分に尊重することを求めています。九州知事会の特別決議もほぼ同様の内容です。
冷戦構造が崩壊した現在、日本が外国の軍隊から武力攻撃を受ける可能性はほとんどありません。有事法制の真の狙いは、憲法に違反の米軍との集団的自衛権の行使、米軍の後方支援のための国内法の整備であることは明らかです。
私達はアジアの非核化を進め、近隣諸国が共通のテーブルに集まった安全保障機構をつくるなどの努力こそが必要であり、地方自治体や国民に戦争協力を強制する法制度は、世界の軍縮の流れに逆行するものと考えます。有事法制はアジアの国々からも日本の戦争準備体制を示すものと考えられています。
有事法制に区長が強く反対するよう求めますが、如何でしょうか。
次に介護にかかわる事故について伺います。
高齢者をケアする介護施設での転倒や転落を中心に事故が増加しているとの報道がされていることは、以前も本会議で指摘しましたが、最近、神奈川県のまとめた県内の介護施設などでの介護事故の報告によれば、2001年4月から7月までの事故報告件数は 869件で、介護職員の介護行為を原因とする死亡事故はありませんでしたが、けがでは職員の過失性の強いものも含まれているとしています。
この神奈川県の集計結果は、利用者の病気が急に発生した場合なども含まれていますが、平均して1ヶ月に100件以上です。1件の事故の背景には同種の事故が数多く存在すると理論化したアメリカのハインリッヒの法則は日本でも通用すると考えられていますので、実際の介護事故は相当の件数と考えられます。
都国保連の平成12年度の介護サービス「苦情相談白書」では、具体的な被害・損害が239件と報告されていますが、介護事故の正確な全体は更に多いものと予想されます。
社会福祉法では、常に福祉サービスを受ける者の立場にたって良質かつ適切な福祉サービスを提供すべきものと定められていますが、介護事故が多発しているのが現状ではないでしょうか。
国民生活センターがまとめた2000年6月の調査では介護事故を「過失のある介護事故」と「過失のない介護事故」に分類したうえで「介護の過程で利用者に対し何らかの不利益な結果を与えた場合、または与える危険のあった場合」を「介護事故」としています。しかし、調査対象の施設の多くは「介護事故」という認識をしていないこと。その結果、介護事故としての記録は十分とられておらず、多くの施設が事故発生件数を把握していないこと、保険金が支払われた事故は少なく、損害回復は不十分であることを明らかにしています。
区長の「介護事故」と、損害回復についての認識について伺います。
介護事故の報告義務根拠は、厚生省令第37号等で定めらており「サービス提供中の事故発生については、速やかに被保険者の家族、保険者、担当居宅支援事業所へ連絡を行うとともに必要な措置を行うこと」「損害賠償が必要なときは、速やかに行うこと」とされています。
文京区での介護保険制度実施以降の実態はどのようになっているのでしょうか。厚生省令等で求められている報告が行われているのでしょうか。施設サービス、居宅サービスについての事業者からの年次ごとの報告の件数と特徴を伺います。
「あんしんサポート文京」が昨年区社会福祉協議会に設置されましたが、苦情相談の最新の実績と特徴と今後の活動重点についても伺います。
板橋区では平成12年12月より「介護事故に関する報告について」を施設サービス事業者、居宅介護支援及び居宅介護サービス事業者あてに通知し、報告様式等のルール化を行っています。新宿区では区内の施設サービス事業者を対象に区独自の事故報告取り扱い要領を定め事故の把握を行っています。文京区においても具体的な取り組みを行うべきだと考えますが、如何でしょうか。
文京区高齢者実態調査をみても、全般的に意思能力の弱い高齢者や痴呆性の高齢者が本当に多数いらっしゃることがわかります。また、一人暮らしや高齢者世帯が半数以上という現状も大変な実態だとあらためてわかりました。これらの高齢者の権利が保障されるためには公的なチェックのシステムが重要であることは当然のことです。特に区立の施設については区長に管理責任が求められることもあり、介護サービスの質の向上と安全対策が求められています。
介護保険法23条には、市町村が保険給付に関して事業者から「文書その他物件の提出」を求めることができるとされています。苦情解決のために法23条の行使を行う等、指導を強化すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
都社会福祉協議会は、「事故予防対策としてのリスクマネジメント組織構築の手引き」「社会福祉施設におけるサービス向上の視点」を本年の3月に公表しています。この「視点」は施設だけではなく、居宅介護サービス事業者にも適用できる「視点」です。リスクマネジメントの手法、環境整備、安全管理委員会の設置、いわゆる「ひやり事故」「はっとした事故」などのリスクの把握、実施要綱、事故予防対策のセルフチェック等が具体的に提案されています。
区長はこれらの提案の検討を行うべきです。今後、介護サービス利用者の立場に立った上での「サービスの質の向上」にどのように取り組む考えか伺います。
また、「事故発生後におけるリスクマネジメント」については、文京区における具体的な介護事故について、実施すべきだと考えます。これらの検討にあたっては、外部からの医療関係者や専門委員も不可欠と考えますが、いかがでしょうか。
次に住民基本台帳ネットワークについて、伺います。
個人情報の保護に関する法律案、行政機関個人情報保護法案の審議が国会で開始さましたが、問題だらけのこの法案は、今国会では成立の見通しがありません。住民基本台帳ネットワークの前提となる法案が成立しない以上、あらためて区長に住民基本台帳ネットワークの8月実施を延期することを国に強く求めるよう求めますが、いかがでしょうか。
個人情報保護法制は、高度情報化社会が進展する中で不可欠なものです。しかし、重大な欠陥がある法案は、若干の修正ではおよそ解決にはなりません。高度情報化社会における実効的な個人情報保護を真に実現する法制のあり方について改めて国は再検討すべきです。
1999年8月に住民基本台帳ネットワーク(以下「住基ネット」という)の導入が決まった際、住基ネットが国民すべてに番号を付し、しかも全国的なコンピュータネットワークによって個人情報を流通させることは、プライバシー侵害の危険性が高いものであることを理由に、同システムの施行に先立って「個人情報保護に関する法整備がネット実施の前提と認識している」と当時の小渕首相が国会で答弁しています。したがって法案が成立しない以上、住基ネットを施行すべきではありません。
日弁連も、昨年9月に十分な個人情報保護立法がされるまでは、施行を延期すべきだとの会長声明を発表しています。また、多くの市区町村が住基ネットの導入に消極的です。日弁連の昨年12月の調査では住基ネットによる本人確認制度は住民にとってはっきりと「デメリットが大きい」と答えた自治体は219自治体、住基ネットをさらに進めていくことについて反対との答えが119自治体でした。
多くの自治体は、プライバシー保護と技術的な準備の両面について大きな不安を持っており、このまま実施することは収拾のつかない混乱をもたらすおそれがあります。
地方自治情報センターの準備状況は、非常に不十分といわれ、セキュリティの脆弱性が指摘されていますが、区長はどのような認識をもっていますか。
1999年の国会審議においては、「利用目的を厳格に審査し、システムの安易な拡大を図らない」という付帯決議が行われましたが、今国会に、国民年金、健康保険、雇用保険、旅券の発行など日常生活に関する事務で171業務の新たな追加・拡大利用として「行政手続きオンライン化関連3法案」が提案されようとしています。個人情報の収集・管理・多目的利用が国家において行われることは民主主義国家にあってはなりません。監視国家、国民総背番号制の誕生です。
しかも準備されている法案には、複数の民間団体が利用者として名を連ねています。これは、法制定の趣旨を逸脱するものと考えますが、いかがでしょうか。
杉並区長は、個人情報保護法案が成立しない以上、情報提供の一時停止など、実力行使も辞さないと、国に質問書を送付する考えを明らかにしています。
文京区においては、ICカード標準システムの開発及び実証実験事業を行うとの説明が担当者より行われましたが、住其ネットは延期されるべきであって、実証実験は行うべきではありません。区長に強く求めますが、如何でしょうか。
次に教育長に区立学校選択制度に関して質問します。
去る5月22日の教育委員会で、区立学校選択制度検討委員会の設置が承認され、今年度内に学校選択制度に対しての検討をまとめる意向が学校教育部より示されました。区立学校選択制度について、私達、市民フォーラムでは、昨年の第2定例会で、「慎重に諸課題の検討を行うべき」と意見を述べましたが、あらためて慎重に時間をかけて、十分に区民参画の下で検討するよう要望します。今年度、学校選択制度を導入している区は7区で、2003年度からの実施予定は5区と聞いています。
区では、今年度中に保護者の意向調査などを実施し、中学から導入したいという方針のようですが、「実施ありき」と進めるべきではありません。
学校選択制度導入の検討課題として、まず、区内全域を対象にする完全自由選択制度にするかという点があげられます。すでに学校選択制度を導入して、3年目を迎える品川区では、中学校の場合、区内全域を対象にしていますが、当初「今までの越境入学の実態などから、初年度に特定校に殺到する事態は起こりにくい」という区教育委員会の予想に反して、いわゆる有名校に2倍の応募者があったそうです。これまで、指定校変更を実質的に受け入れてきた文京区は、学校選択制度導入後の影響をどのように考えていますか。品川区のように有名校へ希望が殺到する場合、国立校・私立校への併願などもあり、最終的に入学校が決定するまではかなりの混乱が予測されますが、どのよう影響があると考えているのでしょうか。
荒川区、足立区、江東区のような区内全域を対象とせず、隣接校選択制度を採用している区は、豊島区、杉並区ですが、豊島区では「これまでに培ってきた学校と地域の関係にも配慮し、完全な自由選択制はとらなかったと」理由を述べています。教育長は、これらの先行した区での選択対象校についての検討を既に行ったのか、伺います。
文京区は大規模校と小規模校の受け入れ態勢に格差があると思います。各校の受け入れ定員枠を設けた杉並区のように、何らかの枠を設けなければ地域に与える影響も大きいとの考えもありますが、いかがでしょうか。
また、特定の学校に希望者が集中した場合、ほとんどの区で抽選により入学を決定しています。落ちた生徒や家族には一定期間落ち着かない日を過ごすことになり、精神的な影響もあります。区内全域を対象とする完全自由選択制度を導入する区でも、荒川区、江東区のように定員枠を超えた場合、通学区域内の希望者は全員受け入れ、学区域外の者については公開抽選としています。このようなこれまでの学区域に準じた方針についての教育委員会の考えを伺います。
学区の必要性については、@子どもの教育を受ける権利を具体的に保障し、教育の普及や機械均等を図るために、通学する学校を指定すること A実際の学校運営には、教育条件 学校規模 学級規模 施設・設備 通学条件 教員配置などを計画的に整備することが求められ、そのために学区が必要であること Bその学校が居住地にあることで、子どもの成長・発達に及ぼす地域の教育力が期待できることと考えます。
恵まれた環境の新設校と、老朽化した校舎の学校など混在している文京区では、設備のいい学校に生徒が集中してしまう傾向も避けられません。公立学校として最低限どの学校も快適な教育環境を保障することが、学校選択自由化よりも先になすべきことではないかと考えますが、いかがでしょうか。
また、受験を意識した保護者が有名校に殺到する傾向の影の部分は社会問題となっています。どの子も、どの学校でも基礎的学力が身につくようにすることが、公立学校としての責任です。特色ある学校は公教育としての基本の上でつくられていくものだと思いますが、いかがでしょうか。
先行した品川区では、学級崩壊などの問題が起きた中学校が大幅な生徒減に陥り、今春の入学者が9人しかいない中学ができたり、生徒増になった学校では他の学区域外からの生徒が問題を起こしているケースがあったと聞いています。このような学校選択により公立校間の格差が拡大した場合、当然、統廃合も心配され、混乱が起こりかねません。学校選択制度が学校の統廃合に影響を与えることを心配する地域、保護者への説明責任があるとおもいますが、いかがでしょうか。
最後に、学校選択の自由化は教育権の具体的保障という観点から見た場合、数多くの問題点をかかえています。@学校間の格差拡大の不安が大きいこと A積極的な学校選択というより、いじめや、進学率の低さなどマイナスイメージからの忌避がおこること B学校による子どもの「選抜」などがあります。
これらの問題点は、以前私たちが指摘した、地域とのつながりの希薄化や子ども達の生活への悪影響、地方分権時代の教育に逆行するということと共通します。保護者の間には、学校選択自由化を要望する声があるものの、他方では墨田区の保護者アンケートで「学区内選択」が75.7%もあったように、学区内地域の学校への愛着も強く見られます。安易な学校選択制度の導入は、地域に開かれた学校づくりをすすめてきた学校と地域関係者、保護者との連帯感の低下を招くのではないでしょうか。そして、学校を核とした地域コミュニティの崩壊につながることを懸念しますが、考えを伺います。
また、区民参画を標榜している区長のもとで、このような子どもの教育環境や地域コミュニティに影響を与える学校選択制度について、区職員4名、PTA関係者4名、校長4名のみの委員構成で、公募委員の参加がないというのは、問題です。この問題は住民自治や市民参画の視点が不可欠であり、公募による委員の参加を認め委員会を拡大し、十分な時間をかけての検討、賛否両論の専門家の意見を公開の場で住民が聞く機会をつくる等、十分な議論を行うべきだと考えますが、いかがですか。
以上、区立学校選択制に関しては、公教育の理念の確認を含め、様々な角度から慎重に検討し、区民の合意を前提にすることを再度強く求めるものです。
私の質問はこれで終わります。ご清聴まことにありがとうございました。